『天使と悪魔』をみた感想、宗教と科学の関係について



天使と悪魔

監督:ロン・ハワード
脚本:デヴィッド・コープ、アキヴァ・ゴールズマン
原作:ダン・ブラウン『天使と悪魔』
公開:2009年5月15日、アメリカ

感想

割と評価の高い作品のようなのですが、個人的にはちょっと微妙だったかなぁという感じでした。面白いのは面白いんですけど、もうちょっと何か欲しかったかな、と思います。

前作の『ダ・ヴィンチ・コード』(原作は順番が違うようです)は、なかなか興味深いことを言っていて面白かったのですが(しかし宗教学的にはかなり無理のある解釈です)、今回のは「知的」といったら変かもしれませんけども、ひねりのある解釈というか、そういうのがなくて、あまりワクワクしなかったです。確かに宗教は大いに関係しているのですが、同時にあまり宗教的でないというかな、いやそんなことはないんですけども表現が難しいですね…。でも、コンクラーベの様子だとか、美しい教会建築に美術作品など、見ていて面白いと感じるところは多くありました。ラストの展開も良かったですね。ただ、欲を言うならば、もう少しひねりが欲しかったです。良く言えばわかりやすい、悪く言えば単調、そんな作品でした。

あと、この作品の大きなテーマとして、宗教と科学の対立があります。これについて書きたいことが色々あるのですが、言い出したらキリがないので止めておきましょう。ただ、あえてここでは逆のことについて簡単に触れたいと思います。

宗教と科学の対立がしばしば問題になるのですが、宗教と科学の境界線が曖昧になってきていることもまた問題です。

例えば、映画とかゲームではよくあるのですが、死んだ人のデータが実は保存されていて、それがAIに移植されて復活する、というような場面がよくあります。これは確かに科学技術を用いていますが、極めて宗教的です。

あと、宗教ではこの世とあの世を対比させて述べることが多いですが、科学でもそういう傾向があって、例えば現実世界とSNSなどのバーチャルの世界の対比ですね。有名どころでは『マトリックス』もそうだと思います(『マトリックス』は色々な意味で宗教的な作品なんですが)。

他にも、直接的なものでは、バーチャル神社、バーチャルお守りなどもあります。

こうなると宗教と科学がごちゃごちゃになってきます。宗教と科学を統合しようという取り組みはずっと行われてきていて、それは確かに重要なことだとも思うのですが、このような状態で統合するとなると、はたして何を統合しようとしているのかという疑問が出てきます。ここが曖昧だと、両者が相手の悪いところだけを見て、それをどうくっつけるか、みたいなことになりかねません。

統合するのであれば、まずは、ある程度は両者の輪郭が明確である必要があると感じます。その輪郭を考えるときに、アイデンティティと一緒なのですが、不完全性定理みたいに自己言及すると失敗するので、他者の存在が必要です。ここに宗教と科学の対話の意義があると思います。同時に、宗教と科学がどうかかわっていけばいいのかという話にもつながると思います。何だかんだで、よく言われることですが、対話が必要なのでしょう。