スマブラの面白さとゲーム業界における成果


【ゲームの企画書】 どうして『スマブラ』はおもしろいのか? 最新作『スマブラSP』の制作風景からゲームデザイナー桜井政博氏の頭の中に迫る

この記事を読みました。スマブラがどのように制作されているのか、そして制作に大きく関わっている桜井さんのコメントが書かれていて非常に面白かったです。記事タイトルにもあるように、どうしてスマブラはおもしろいのかについていろいろな視点から書かれているのですが、個人的なことを言えば、スマブラの面白さはもっと単純なところにあるように思います。

スマブラが面白いのはゲームだから

この一言に尽きると私は思っています。スマブラはゲームなのです。だから面白い。

こう言うと「スマブラはゲームだなんてそんなの当たり前じゃないか」と言われてしまいそうです。しかし、ゲームが何であるのかを考えると、なかなか難しい問題があります。

一般的にゲームと言えば、ゲーム機などを使って遊ぶデジタルゲーム全般を意味することが多いです。そのため、ゲーム機を使って遊ぶスマブラも当然ながらゲームであるとなるのでしょう。

しかし、ゲームの意味はもっと多様です。辞書を引いてみるだけでもそれが理解できるでしょう。

1 遊びごと。遊戯。「ゲームコーナー」

2 競技。試合。勝負。「白熱したゲーム」

3 テニスで、セットを構成する1試合。「先に二ゲームとったほうが勝ち」

4 「ゲームセット」の略。

(引用:goo国語辞書

とりあえずネットの辞書で調べてみましたが、これだけの意味があります。ここで特に重要なのが2の意味です。ゲームは試合なのです。ゲームの参加者は勝利を目指して戦います。相手がどのような手を使って勝負を仕掛けてくるのかはわかりませんから、ここには不確定要素があります。この部分を予測しながら、戦略と戦術を用いて、できる限り確実へと近づけ、そして勝利を目指していくのです。戦略と戦術を用いるということ、言い換えれば考えるということがゲームの面白さなのです。桜井さんは先ほどの記事の中で「ゲームとは駆け引きだ」と言っていますが、これはゲームの本質を端的に示しているでしょう。

ここで一般的な意味でのゲームについて考えてみます。おそらくゲームと聞いた時にファイナルファンタジーやドラクエを想像する人は多いでしょう。では、これらのゲームに登場するモンスターは、主体的に頭を使って戦略と戦術を用い、主人公に勝利しようとしているでしょうか。答えは否でしょう。モンスターはプログラマーの設計に基づいて動いているだけだからです。結局のところ、それらのタイトルはソフト購入者が勝てるように作られているのであって、ゲームではありません。そういう意味では世の中の「ゲーム」の大部分がゲームではないことがわかるでしょう。

ここまで言えば「スマブラはゲームである」の意味がわかってもらえると思います。スマブラには駆け引きがある、ゲームの要素がしっかりとある、だから面白いのです。本来的な意味でのゲームが好きな人は、一般的にはゲームと呼ばれているがゲームではないものに満足できません。なぜなら最初からシナリオが組まれており、プレイヤーはそれに従うしかできないからです。

確かに、ゲームの要素さえ持っていれば必然的に面白くなるというわけではないでしょう。当然ながらスマブラ独自の要素も大きく関わっているのであり、そこには桜井さんの創意工夫が大きな影響を与えています。しかし、世の中にゲームではないものが溢れている中で、本来的な意味でのゲームが出てくるのは、それだけですごいのです。

スマブラの成果

スマブラの成果は、本来的な意味でのゲームを大衆化したことにあると私は思っています。

ここまで書いてきたように、世の中にはゲームではないものがゲームという名であふれかえっています(私はそれを双方向動画と呼んでいます)。これはゲームの大衆化とも言える現象です。繰り返しになりますが、ゲームは考える遊びです。しかし、すべての人が考えることに喜びを見出せるわけではありません。営利企業であるゲーム会社が生き残るためには、そのような人も対象にしなければならず、結果として「考えなくてもいいゲーム」という矛盾したものを生み出すようになりました。そして、再生する機械の名称が「ゲーム機」であるために、ゲームでないものがゲームと呼ばれるようになりました。これがゲームの大衆化です。

そんな中でスマブラは大ヒットしています。極めてシンプルな操作、大人気の任天堂キャラクターが動き回るなど、本来的な意味でのゲームを知らない人でも楽しめる要素が詰まっています。これは、本来的な意味でのゲームの大衆化と言えるのではないでしょうか。ゲームでないものが溢れている中で、本来的なゲームを広めることに成功したのは、スマブラの大きな成果だと私は思うのです。

さいごに

本来的なゲームは勝利を目指すものです。ゲームの楽しみは勝利そのものではなく、勝利を目指す過程にあるのです。そのため、ゲームに負けてしまっても楽しめることができます。考えていれば「そんなやり方があったのか!」とか「え~!そんなのアリなの?(笑)」といったことが負けても起こります。

なぜゲームでキレてしまうのか - nancolu」でもこの記事とほとんど同じ内容のことを書いたのですが、スマブラに関する口コミなどを見ていると、どうも勝てて当然という意識があるように思われます。おそらく、クリアできることを前提に作られている双方向動画の影響があるのでしょう。

しかし、ゲームには常に不確定要素があるのであり、これが確定に変わることは決してありません(ちなみにそれはパズルです)。この不確定要素を楽しめないとゲームは難しいでしょう。

良い大学に合格しないといけない、良い会社で働かないといけない、そうでなければ幸せにはなれない、というように不確定を排除する傾向が強い現代において、ゲームが衰退しているのは当然と言えるのかもしれません。