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『未来を生きる君たちへ』を見た感想



『未来を生きる君たちへ』

監督:スサンネ・ビア

脚本:アナス・トマス・イェンセン

公開:デンマーク2010年、日本2011年

感想

ちょっとひょんなことから、たまたまこの作品を知って、見てみることにしました。予備知識とかまったくなくて(お恥ずかしい限りです)、「アカデミー賞とってるんや、ほ~ん」みたいなことを思いながら見たんですけども、どえらい作品でした。素晴らしいです。1時間くらいしたくらいから涙出てきて、そのあともずっと泣いていたような気がするんですが、見てて辛いから早く終わらんかなぁとか思っていました。

まあ、そんなのはどうでもいいんですが、私が気になったのは暴力が生じる構造についてです。対立は悪いものとして語られることが多いのですが、対立そのものが悪いわけではありません。よく言われることですけども、対立を起こす両者にはそれぞれの価値観とか正義感というのがあって、絶対悪というのはないです。両者はそれぞれが思う方法で、現状抱えている問題を解決しようとしているわけですね。前に進もうと懸命になっているのですから、対立はポジティブなものとして解釈することもできます。ただ、その解決方法が暴力という形をとった場合は注意しなければなりません。

そして、暴力は決して許されるものではありません。ただ、暴力が生じる背景を考えると、割と根が深かったりもします。暴力が起きたら、暴力を起こした奴が無条件で悪いとされることが多いのですが、暴力の背景に何らかの抑圧などがあることが多いんですね。今回の場合では、クリスチャンがソフスを殴ったのはエリアスのいじめに巻き込まれたという問題があります(作中では何も語られていませんが、ソフスも何かに悩んでいたのかもしれません)。また、クリスチャンがラースに仕返ししようとしたのも、その背景にはラースの理不尽な対応があります。さらにもっと深く考えると、クリスチャンは母親を失った悲しみや、それに対する父親の態度に不満を持っていました。こういった鬱憤がソフスやラースへの暴力にも影響を与えていたのかもしれません(わかんないですけどね)。

映画の外のことで考えてみると、例えば、最近では宗教紛争とかがあげられるでしょうか。普通の人からすれば、暴力をふるう宗教ってクソだな、みたいな感じだと思うんですが、実は宗教が直接的な原因となっている紛争はまずないです。たいてい、経済的・政治的・社会的な問題への反発なんですね。だから、諸問題から何らかの抑圧をずっと受け続けていて、それが耐えられなくなったときに暴力が起きることがあるんです。多くの人はその暴力しか見ないために、その背景がわからないから、根本的な原因の理解ができないんです。

しかし、何らかの問題への反発や解決というのが必ずしも暴力という形になるわけではありません。映画の中ではアントンが非暴力という形で解決を目指しました。「なぜ殴ったんだ?」と聞いて、対話をしようとしていたのが印象的です(結果的には対話に至りませんでしたが)。非暴力といえば、ガンジーやキング牧師を連想しますね。彼らも人種差別とかの抑圧をずっと受け続けていて、その解決として非暴力という形をとりました(中には同時代に同じ抑圧に対して暴力的に解決を図った人物もいるんですけども)。

そんな感じで、あらゆることに対して非暴力的に解決を図ることができればいいんですけども、現実には難しいところもあります。例えば、大切な人が攻撃されているときに、「私は暴力反対なので、何もしません!」と言えるでしょうか。大切な人が攻撃されているのを黙って見ているのはなかなかできるものではありません。確かに、その問い自体がおかしいという批判もあるのですが、直観としては何とも言えないところがあるのではないでしょうか。多少状況は違いますけども、アントンがビッグマンを突き放したのは、直接暴力を加えたわけではないにせよ、それを容認したとも受け取れます。

結局のところ、人間には、平和を望むことと暴力を使うこと(遺伝子レベルで組み込まれている)の両面があります。これとどう向き合っていくかが重要なのでしょう。これは難しい問題だと思います。

あと、付け加えるなら、アントンがアフリカの人たちを治療する場面が印象的だったんですが、映画だからああいう表現なんでしょうけども、実際はもっとひどいです。あとソフスによるエリアスへのいじめはなんとか解決しましたが、これはかなりマシな例だと思います(解決の手段は問題ですが)。こういう現実に対して、さて、私に何ができるんだろうか?と考えると、あまりに無力で、どうしたらいいのかわかりません。でも何かしなければなりませんね。

最後に、ものすごい作品でした。ほかの人がどんな感想を抱いたのか気になって検索したんですが、やっぱり重要な作品なんですね、いろいろな人が書いているようです。

「未来を生きる君たちへ」―復讐の精神構造 | 熊本大学医学部附属病院 神経内科

未来を生きる君たちへ | 国立民族学博物館

この2つは特に勉強になりました。ええ、勉強します、すみません…。