着物の格の違いについて



紛らわしい着物の格について紹介します。しかし、細かいことを言い出すとキリがなく、業界の人ですら把握が難しいので、基本的な説明にとどめます。

基礎

まずは大まかな格のみを確認します。紋の有無や柄、特殊な状況などをまったく考慮しない場合は以下のように考えるのが一般的でしょう。普通、番号は付けませんが、わかりやすさのため、あえて付けることにします。また、限られた場でのみ着用するもの(色打掛や喪服など)は省きます。

  1. 黒留袖
  2. 色留袖
  3. 訪問着
  4. 付け下げ
  5. 色無地
  6. 小紋
  7. その他(木綿、ウールなど)

ちなみに帯は以下の通り。

  1. 丸帯
  2. 袋帯
  3. 京袋帯
  4. 名古屋帯
  5. 半幅帯

※京袋帯と名古屋帯は微妙。名古屋帯には九寸と八寸があり、細分化するならば、九寸、京袋帯、八寸、の順か。

特殊な例

基本的には基礎に書いた順番で格を考えます。しかし、紋の有無や柄の種類、金銀糸の有無などによって格が変わることがあります。また、同じ着物の中でも上下があります。

それぞれの種類を個別に確認します。

黒留袖

既婚者向けの第一礼装。黒地で、裾だけに古典柄が入っているのが特徴です。必ず五つ紋を入れます。格は最も高いです。ただし宮中行事では黒留袖を使うことがなく(宮中では黒は喪を意味するため)、色留袖を使うことになります。

格とは関係ありませんが、着用する人の年齢によって柄を変えることがあります。全体的に重めで地味な印象を受けるものは高齢者向け、柄が大きく色使いが比較的鮮やかに感じられるものは若者向けです。

色留袖

本来は既婚者向けの第一礼装ですが、近年では未婚者でも着れるとされています。色留袖と同じく、裾だけに古典柄が入っているのが特徴です。黒留袖よりも優雅な印象を受ける柄が使われることもあります。また、色は黒以外にもいろいろあり、薄く鮮やかなものが多い傾向です(詳しくは書きませんが、黒の色留袖もあります)。

本来、色留袖は五つ紋を入れます(この場合は黒留袖と同格)。しかし、最近では、色留袖に五つ紋を入れることはやや少なくなってきており、三つ紋や一つ紋、無紋にすることが多いです。この場合は準礼装となり、比較的格式の高いパーティなどでも使用できます。

黒留袖と色留袖の違いに悩む人は少なくありません。本やネットなどでも記述がわかれているほどです。実は、両者の違いはハッキリとはわかっていません。違いはないと考えた方が納得できる点が多いほどです。しかし、一般的には黒留袖の方が格が高いと考えてよいでしょう。無紋にして訪問着に近い使い方をする人が多いです。

訪問着

色留袖の次に格が高いのが訪問着で、パーティ、披露宴、茶会などさまざまな場で使うことができます。縫い目にまたがって柄がつながっている絵羽模様が特徴。最近では無紋が多いですが、中には一つ紋を入れる人もいます(ちなみに訪問着が生まれた当初は三つ紋を入れました)。この場合は比較的格式の高い場でも着ることができます。

訪問着の中における格の違いは非常にややこしいです。ものすごく大雑把に言うと、古典柄が入っていればフォーマル寄り、入っていなければシャレもの寄りになります。最近では現代アート的な訪問着も少なくなく、遊び心のあるものが増えてきました。そういうものも楽しみ方の一つですが、あまりにも「軽い」(これは質が悪いという意味ではありません)ものは格式の高い場では着れませんので注意が必要です。

柄による格の違いを説明する際に、「柄の多い方が格が高い」と説明されることがあります。しかし、これはわかりやすいものの、不適切でしょう。たとえるならば「指輪についている宝石は大きい方が良い」みたいな感じでしょうか。場合によっては品がないと思われます。そのため、何かの客観的な指標に頼るというよりは、全体の印象から格を考えるのがよいでしょう。

そして、帯との組み合わせでも格が微妙に変わってきます。帯の格を大雑把に言うと、古典柄でかつ金銀糸が使われているとフォーマル、古典柄ではないが金銀糸が使われているとセミフォーマル、古典柄でなく金銀糸もない場合はシャレものになります。フォーマル寄りの訪問着であれば帯もフォーマルにしないといけませんが、シャレもの寄りの訪問着であれば、セミフォーマルの帯とシャレものの帯とで印象が大きく変わるでしょう。

付け下げ

付け下げは訪問着と似てはいますが、柄が縫い目をまたがることはなく、すべての柄を上を向いているようになっています。非常にシンプルなデザインになっており、訪問着よりも付け下げを好む人もいるほどです。そのような需要の高まりから、柄が縫い目をまたがってつながっている付け下げ訪問着が登場しました。格としては、訪問着、付け下げ訪問着、付け下げ、となります。しかし、そんなに大きな差があるわけではありません。

付け下げ訪問着、付け下げも訪問着と同様に柄や帯との組み合わせによって格が変わります。

色無地

白生地を一色で染めたもの。格は訪問着や付け下げよりも下になりますが、紋を入れると一気に格が上がります。五つ紋は非常に格式が高くなり(五つ紋は珍しいです)、三つ紋でも訪問着より格が高いです。一つ紋であれば訪問着よりも下になりますが、それでも格式ばった印象になります。

小紋

同じ柄を繰り返したもの。基本的には、ちょっとしたオシャレ、といったところです。格式の高い場では着れませんし、紋も入れません。しかし、落ち着いた小紋にセミフォーマルの帯を合わせると、訪問着ほどではありませんが改まった印象は出せます。

また、小紋の中には江戸小紋と呼ばれるものがあります。鮫・行儀・通しの3つが有名です。これは小紋の中では別格で、無紋の色無地よりも格が上がります。また江戸小紋には紋を入れることができ(普通は一つ紋)、この場合は準礼装になります。

着物には染(後染め)と織(先染め)の2つがあり、染の方が格は高いです。紬は織の着物なので、染の中で最も格の低い小紋よりも下の格になります。紬は製造が難しく、高価になることが多いのですが、値段と格に関係はありません。100万円の紬と10万円の小紋でも小紋の方が格上です。

紬には柄の入っていない無地のものがあります。これは柄の入っている紬よりも格上になります。もちろん、この場合でも小紋よりは格下です。

例外があって、紬の訪問着(絵羽模様のある紬)が存在します。これは紬でありながらも訪問着と同格になります。ただし、染の訪問着よりは格下と考える場合もあります。

まとめ

着物の格は一応は決まっているものの、紋の有無や柄によって格が変化することがあります。紋に関しては見ればわかりますが、柄については慣れるしかありません。実際に多くの着物に触れてみて勉強することが大切です。