安くて手軽に着れる着物が欲しい?ちょっと待って!

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着物を着てみたいというお客さんの考えと、着物を簡単に着せてあげたいというお店の考え。これが一致して、安くて簡単に着れて、洗濯することもできるような着物が販売されています。しかしこれ本当に良いのでしょうか?

着物文化を広めたい派と着物の質を高めたい派

着物に携わる人を無理やり2つに分けると、「着物文化を広めたい派」と「着物の質を高めたい派」に分かれます(以下、文化派、質派と書きますね、長いので)。

文化派の特徴

文化派というのは、着物を着る人が少なくなってきたことに対する危機感の表れで、今まで着物を着たことがない人に対しても着物を着てもらいたい、と考えます。

質の高い着物というのは多くの場合理解しにくく、素人にはその良さがあまり伝わりません。そのため、素人にも興味を持ってもらえるように、

  • 値段を安くする
  • 仕立て済みの状態(プレタ)で着物を売る
  • 自宅でも洗濯できる
  • マジックテープなどを使ったり、最初から結び目を作ったりなど、簡単に着れる
  • トランプの柄など、従来にはなかった若者向けの柄付けをする

といったことをしています。

質派の特徴

質派というのは、文化派に対抗して生まれてきたように思います。つまり文化派が素人向けの着物を大量に作りだしたことで、着物の質が低下してしまい、それへの危機感・対抗です。

文化派への反論

ちなみに私は質派です。文化派がよく行う主張に対して反論をしてみたいと思います。

「多くの人に興味を持ってもらうことで着物文化が根付くはずだ」

これは、たぶんですけども、文化派の根本的な考え方なのだろうと思います。素人にも分かりやすく着やすい着物を低価格で販売することにより、多くの人が着物を着ることで、着物離れを改善できるはずだ、ということですね。

これへの反論なのですが、「簡単な着物」が定着することが、本当に着物文化の定着になっているのか、ということです。

例えば、カレーで考えましょう。カレーはインドの伝統的な食べ物です。ちょっと大げさかもしれませんが、カレーはインド文化の代表的なものと言っていいでしょう。では、簡単に作れるレトルトのカレーが日本に流通するようになったからといって、インド文化が定着したと言えるのでしょうか。

インドの本場のカレーとレトルトカレーって全く違いますよね。伝統的な技術が使われた質の高い着物と、簡単な着物、全く違いますよ。簡単な着物が流通しても、それは着物文化の定着とは言えないのではないでしょう。

また、文化派としては、簡単な着物を着ることでより深い関心を持ち、いずれは質の高い着物を購入してくれるはずだ、という考えを持つ人もいるようです。では、レトルトカレーを食べてカレーへの関心を深め、インドの本場のカレーに興味を抱く人は一体どれほどいるのでしょうか。たかが知れてます。全くいないとはいいませんが、ごく少数でしょう。着物も同じです。ましてや着物は値段が高いのですから、ハードルが高すぎます。

『昔の日本人は着物を着ていたのだから、現代人も着るべき』

着物は日本の伝統的な民族衣装で、昔の人はみんな着ていたのだから、現代人も着るべき。そして、誰もが着れるようにするために、気軽な着物を作るべきだ。というような感じの意見ですね。

これは時代を完全に間違えていると思います。それでは、昔の人は東京大阪間を歩いて移動していたのですから現代人も歩くべきなのでしょうか。

今となっては確かめようがありませんが、昔の日本人でも、現代のようなシャツとかジーパンがあれば、それを使ったことでしょう。なぜなら便利だからです。当時にはそういった便利なものがなかった、それだけではないでしょうか。

ついでに言っておくと、昔の日本人が全員着物を着ていたわけではありません。畑仕事をする時に着物を着るわけがありませんよね。

あと余計なことかもしれませんが、現代に流通している着物や着方というのは、明治期以降に作られたものです。文化派の言う「昔」がいつ頃の時代を表しているのか分かりませんが、現代の着物はそれほど歴史があるわけではありません。文化派の多くは明治に誕生したの着物を着ていますが、明治期以前の着物を着るべきなのではないでしょうか。

「着物に興味を持ってもらわなければ着物業界が崩壊する」

これは着物業界の本音かもしれません。大衆迎合を図る、ということなのでしょうが、これも最もな意見に思えますけども、よくよく考えればそうではないのではないか、というのが私の意見です。

気軽な着物というのは値段が安いわけですが、そのために利益が小さくなるわけですね。なので多く人に売っていく必要があります。しかし、そもそも着物というのはそんなに売れるものなのでしょうか(まあだからこその大衆迎合ということなのかもしれませんけども)。

これは商売の基本ですが、利益を出すためには、単価を上げるか回転率を上げるかのどちらかしかありません。着物で回転率を上げるのは無理でしょう。

着物を安くしたといっても、やはり数万円はします。数万円で着物を変えるのは安いですが、一般的に考えれば服に数万円は高いです。数万円をポンポン出す人がいるのか、って話です。

こういうことを言うと怒られるのでしょうけども、数万円の質の低い着物を着るくらいだったら、銀座松屋とかで数万円の洋服を買っている方がよっぽど良い買い物だと思います。

着物業界発展のためにも質の追求が必要

私としては、着物の質を追求し続けることが、着物業界の発展に繋がると考えています。着物は分かる人にだけ売ればいいと思うんです。価値の分かる人であれば、値段が高くなっても買う人はいるはずです。

最近の着物業界ではいかに安く見せるかにやっきになっているようです。割引を前提にした料金設定なんかは典型的ですよね。何で安く売るんですか?何で着物の価値を自ら下げるようなことをするんですか?商品に自信があるならちゃんと売れよ、って思うんです。

着物業界そのものが「着物はダメだ」って思っているのでしょうね。そりゃ着物業界は衰退しますよ。当然の結果です。

別に私は着物を高く売れと言っているのではありませんし、高い着物を買えと言っているのでもありません。普通の着物(簡単な着物に対して)を普通に売り買いしましょうよ。

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