iPhoneはジョブズの精神からどんどん離れている?

新型iPhoneはジョブズを無視してる?

初めに言っておくと、私はアップルの商品にはあまり興味がなく、ジョブズのこともそれほど知っているわけではありません。また私はiPhoneは5しか使ったことがなく、今はandroidを使っています。つい先日Nexus5Xをandroid8.0にアップデートして若干嬉しい思いをしています。と言ってもそもそもスマホにはそんなに興味がないんですけども。これを前提にちょっと考えてみたいと思います。

iPhone8やiPhoneXが発表されました。そして今回に限らず、新型のiPhoneが発表されると「ジョブズだったらこんなのは作らなかっただろう」「ジョブズの精神は無視されている」みたいな意見が多く出されます。

私の意見としては、結論から言うと、ジョブスを無視しているわけではないだろう、むしろジョブズの精神を商品に取り入れるならばジョブズのそれとはちょっと変わった感じの形にならざるを得ないのでは?という感じです。

メタファー

ジョブズのiPhoneへのこだわり(「こだわり」って本当は悪い意味なんですけど、みんな「こだわり」と言うのでここでもそうします)には色々あると思うのですが、代表的なものとしてはデザイン、特にUIにはこだわっていたようです。私はジョブズについて詳しく知っているわけではないので、らしいとしか言えないんですけども。

またUIにこだわるとメタファーという考え方が出てくるのですが、これは一言で言うと、比喩です。例えば、iPhoneに限らず電話のアプリのデザインは、電話の受話器の形をしています。これがメタファーです。

そしてメタファーがメタファーとして機能するためには、前提が必要です。電話アプリで言うならば、過去に受話器を使って電話をしていた体験があるからこそ、受話器のデザインで電話ができるということが理解できるわけです。

他にもジョブズは電子書籍のデザインにはこだわっていたようです。スマホなどで電子書籍を読むと、たいていページの概念があります。次のページに進む際はスライドをするわけですが、その際に、実際にページがめくれるようなエフェクトが付いています。これも実際の「読書」という体験があるから機能するメタファーです。

メタファーを重視すると使いにくい

このメタファーというのはリアルにしていくと冗長になります。20代以上の人ならば受話器で電話をしたことがあると思いますが、10代くらいだったら中には受話器を知らない人もいるでしょう。このような人たちが大多数になると受話器で電話ができることが分からないことになります。

では何だったら分かるのかというと、スマホのデザインでしょう。スマホで電話をするわけですから。メールも今のデザインは手紙になっていますけども、手紙なんか使うことはほぼないでしょうから、これもスマホのデザインでいいでしょう。カメラも一眼レフを使う人は稀で大半はスマホでしょうから、カメラもスマホのデザインでいいでしょう。という感じで、メタファーをより現実に近づけるならば、全部スマホのデザインで良い、みたいになります。極端な例ですけどもね。

メタファーはあくまでも使いやすくするためにあるのであって、ここが目的化してしまうと、逆に使いにくくなってしまいます。

さっきの電子書籍でいうならば、別にページをめくるエフェクトなんかなくても、スクロールで文字を送れればいいのであって。この遊びの部分が全面に出てしまうと、本来の「文字を読む」という動作がやりにくくなります。エフェクトが邪魔になってくるんです。

このように1つ1つのメタファーを重視したり、リアルを追求すると不具合が出てきます。これを解決するためには、全体の構造化や動作の組み合わせというのが必要になります。

ちょうど私はiPhone5を以前使っていて、そのときにiOSが大幅に変わったんですけども、その際は画面に奥行きを持たせ、画面の構造を意識しやすいようなデザインになっていました。これでアイコンそのものではなく、周辺を利用することで、目的のアイコンを強調することができます。

時代の変化

こんな感じで、メタファー1つとってみても、時代の変化を存分に受けることが分かります。ジョブズが活躍していた時には電話(受話器)やカメラなどの明確な前提があったためメタファーを重視するということができていたわけですが、前提を共有していない人にとっては通用しないわけです。

メタファー以外にも、時代の変化を受けている部分は多くあるはずで、スマホの画面がどんどん大きくなる流れ(iPhoneXは典型的だと思います)もありますし、画面を大きくするならば当然デザインにも変更は生じるでしょう。

そういったことを無視して、ジョブズの言ったことや、実際の製品に見られるアイデアを妄信し、「ジョブズはこう言ってるんだから、こうすべきだ」ということをいつまでも続けていると、取り残されることになると思います。

ジョブズの精神の多様性?

ではジョブズの言ったことや製品に見られるアイデアが、もはや時代遅れのものでしかないのかというと、全然そんなことはないはずです。

ジョブズの生きていた時代と、今私たちが生きてる時代では、価値観や技術の進歩など、状況がまったく違うのですから、今の時代の感覚をジョブズの言葉に無理やり当てはめると、そりゃおかしなことになるでしょう。

ジョブズの言葉や製品に見られるアイデアというのは、ジョブズが生きていた時代に生まれたものです。そのため、現代にはあってジョブズの時代にはなかった概念というのがあるのであり、その概念を無理やりジョブズの言葉に当てはめると当然おかしなことになります。

であるなら、ジョブズの言葉を今の時代に置き換えて再解釈する必要があります。そうすると、当然ジョブズの言葉にも矛盾が出てくるでしょうが、これは別に悪いことでも何でもなくて、むしろこれはジョブズの精神の多様性と言うべきでしょう。

「ジョブズはこういった、だからこうすべきだ!」ではなく、「なぜジョブズはそのように言ったのだろうか、その背景には何があったのだろうか。また今の時代においてはジョブズの言葉はどのように解釈すべきなのだろうか」と考えることを省略してはならないと思います。

そして今のAppleがジョブズを無視しているのかというと、私にはそうは思えません。iPhone8、Xのプレゼンでは最初にジョブズの音声が使われたそうですが、これは明らかにジョブズを意識しているでしょうし、製品にもジョブズのアイデアは生かされていると思います。

Nexus5Xをandroid8.0にアップデートしてみた感想