毒のある絵画―やや閲覧注意かも?―

パッと見、ただの気持ち悪い絵や怖い絵のように思えるかもしれません。しかしそういった絵であっても描かれた背景というのがあるはずです。画家は偉大な存在とされることが多いですが(その通りですけども)何だかんだ言って私たちと同じ人間ですし、私たちと同じように悩み苦しんでいたはずです。その苦悩が絵画という形で表現されているだと思います。その苦悩と直面したとき、私たちの苦悩も癒されます。毒は良薬にもなり得るのです。

作品の並び順はまったくのテキトーなので気にしないでください。

クノップフ『シューマンを聞きながら』

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クノップフは象徴主義の画家です。解釈は難しいところですが、女性が右手で頭を押さえているその仕草はどことなく何かに悩んでいるかのような印象があります。

ファン・ゴッホ『刑務所の中庭(囚人の運動)』

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みんな大好きゴッホの作品です。ゴッホが自分の耳を切り落としたことは有名ですが、その後に精神病院に入院させられて、入院中に制作されたのがこの作品です(ちなみに有名なゴッホの作品の多くは入院中に描かれました)。

囚人たちが輪になってひたすら歩く運動をしている場面が描かれています。囚人たちはうつむいていて、まったく生きる力というのが感じられません。しかしその中に一人だけこちらを見ている男性がいます。解釈は分かれていますが、もしかするとゴッホ本人かもしれません。精神病院の中で苦しみながらも希望を見出そうとしていたのでしょうか?

モロー『出現』

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モローは典型的な象徴主義の画家です。かなり独創的な作品が多いのですが、その中でも傑作と言われているのが本作『出現』、モローと言えばコレってくらいの作品です。

描かれているのは新約聖書に登場するサロメです。ヘロデ王の前でサロメが踊りを披露し、その褒美に願い事を叶えてやろうってヘロデ王がサロメに言うんですけども、サロメの裏にいた母親が洗礼者ヨハネの首を求めるんですね。ヘロデ王はそれを聞いて戸惑うんですが、「願い事を叶えてやろう」と言った以上は撤回できず、首を斬ることになります。

ちなみに聖書にヨハネの首がサロメの前に登場するという記述はありません。モロー独自の解釈です。しかしこれはすごい。何と言えばいいのか分かりませんけども、善と悪、生と死、色々なものがごちゃごちゃとしていて、しかもそこにサロメのこの美ですよ。本当に繊細で、美しい作品です。

イリヤ・レーピン『イワン雷帝と皇子イワン』

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イリヤ・レーピンはロシアの画家で写実主義になるのかな?人間の精神をえぐるような鋭い作品が多くて、本作はレーピンの代表作です。

描かれているのはロシア皇帝イヴァン4世とその息子さん。イヴァン4世は有名ですが、残忍な性格で「雷帝」という異名があるほどの人物です。そのイヴァン4世がついカッとなって愛する息子を殴ってしまいました。ハッと我にかえるイヴァン4世。取り返しのつかないことをしてしまい、後悔しながら息子を抱きかかえている様子が描かれています。

このイヴァン4世の表情ですよ、もうね…。ここまで人間の精神的なところを描くのはすごいです。

ゴヤ『我が子を食らうサトゥルヌス』

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ロマン主義の画家ゴヤです。ゴヤはもともとは宮廷画家だったんですが、病気で倒れてから聴覚を失ってしまいました。その結果として鋭い感性を得、人間の醜いところをえぐるような作品を残していきます。黒い絵というのが有名ですが、本作はその代表作です。

神話がテーマになっています。サトゥルヌスが、自分の息子によって地位を奪われるという予言を受け、それを防ぐために自分の息子を全員食い殺すというお話なのですが、その場面を描いています。言うまでもないことですが、人間の異常な欲求や残忍性といった醜い姿をこれでもかというほどに描いていて、ね、どうなんでしょう。

病気、老い、死。ゴヤも苦悩していたのかもしれません。

ゴーギャン『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』

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後期印象派ゴーギャンの作品、最高傑作です。人間の生から死を描いたとされています。中央の若者、そして左の老人と移り変わっていく様を描いたのでしょうか。解釈が難しい作品ですが、ゴーギャンの死生観、生き様というのが真剣に描かれているように思います。我々はどこからきたのか、我々は何者であるのか、どこへ行くのか、これらは人間の根源的な問いであると思いますが、こういう問いと真剣に格闘した人間というのは素晴らしいですね。

さいごに

他にもいろいろあるんですが、これくらいにしておきます。本当は鴨居玲とかフォートリエとか素晴らしい画家の作品がいっぱいあるんですが、まあいいでしょう。

別に「芸術はこうあるべきだ」とかそういうことを言うつもりはないんですが、こういう作品もあるということをもうちょっと知って欲しいという気がしています。芸術って綺麗なものとは限らないんですよ。一般的には(というと語弊があるかもしれませんが)お花とかそういうぱっと見綺麗なものを芸術と思っている人が少ならずいると思うんですけども、いっちゃ悪いけど、お花なんか見てて面白いか?って逆に私は思っちゃいます。もちろん花を描いた素晴らしい作品もありますけどね。

ひどい場合は、ここで紹介したような作品を見て「呪われてる」とか言う人もいるんですが、ちょっと画家をバカにし過ぎていやしませんか?作品をどのように捉えるかは自由です。「こんなクソみたいなの描きやがって」と思うのもいいでしょう。しかし、作品を通して格闘した人を侮辱するのは許せません。「呪われている」というのは単なる作品への感想だとは思えません。